ほの暗い地下の中から

 とある薄暗い部屋。
 一人の少女が眠っていた。否、眠らされていた。
 一糸纏わぬ姿で、手足や腰をベルトで固定された格好のまま……
 不意にその少女が目を覚ました。
「…あれ? わたし、いつの間に眠っていたのでしょうか」
 その少女の名は佐々巴。今時珍しい長い黒髪がトレードマークの少女である。
 だが、寝起きのためか自分の置かれている状況を全く把握できていないようだ。
「………? 手が動かない? 脚も? ………っ!! 何なのですか!? このベルトは!!
 というよりも、どうしてわたしは服を着ていないのです?!?」
『ようやく目を覚ましたのですね、巴さん』
「この声は…ガニですね!? このベルトを早く外しなさい! そして服を持ってくるのです!」
 巴は全く怯むことなく普段の調子で謎の声に指図していた。
『ち、違います! 私は、ガニメーデスではありません。私は……えーと、…!!
 羊βとでも名乗っておきましょうか』
「何を言ってるんですの! ガニメーデス!! 早くこれを外しなさい!」
『だからガニメーデスじゃないって…… まあ良いです。
 あなたの質問に答えましょう。 残念ながら今はその拘束を解くことは出来ません』
 謎の声は淡々と状況を説明していく。
『あなたは今、私の実験&今後の記録のためにここにお連れしました。
 そう。これはけっして私利私欲の為などではない、きちんとした実験記録をとるために…』
「解りましたから早くこれを解きなさい」
 話を聞くだけで疲れたのであろう巴は、溜息をつきながら謎の声に言った。
「それに、実験とは何のことです?」
 その言葉を待っていたかのように謎の声は(実際には待っていたのだろうが)
 とても嬉しそうにこう尋ねた。
『知りたいですか?』
「当たり前です!!」
『仕方ありませんね。それではお教えしましょう。でも、その前に…』
「その前に、何です?」
 仕方なく律儀に返答する巴。
『何と!! 今日はゲストをお呼びしているのです! では、どうぞ!』
 謎の声のテンションが目に見えて上がっていく中、巴のテンションは目に見えて下がっていく。
 いや、逆に上がっているかもしれない。はやくガニメーデスを叩きのめしたい、と。
「……で? どこにもゲストなんてあらわれませんが?」
『何をおっしゃってるんですか。 横を見て下さいよ」
 今まで正面しか見ていなかった巴は嫌々ながらも首を横に向けた。
「な!? どうしてあなたがここに居るのです!?」
「…………」
 そこには、同じく日々EOSを相手に戦いを繰り広げている仲間の一人が立っていた。
『そう。凌央さんに実験を手伝ってもらう事となりました。
 というよりも、凌央さんの能力が一番この実験に適している、という訳だったのですが…』
 きちんと説明をする謎の声も今の巴には届いていないらしく、
「凌央! そこでぼーっと見てないでこれを外してくださいな!」
「………(ふるふる)」
 だが、凌央は首を横に振るばかりでその場を動こうとはしなかった。
 そして、また律儀に謎の声の説明が始まった。
『さて、では今回の実験内容の説明に移りましょうか。
 実は、ここだけの話なのですが。博士がこの館から出る前に少しだけ秘密の書類をいただいていまして。
 その中に『能力増強剤』なるものの作成方法が載ってあったのですよ』
 謎の声は嬉々として続けた。
『私はそれはもう寝る間も惜しんではその秘薬の調合に取り組んでいたのですが……
 つい先日完成したというわけでなのです!!』
 謎の声の力説を黙って聞いていた巴は、意外にも納得顔で頷いていた。
「あなたにしては珍しく役に立つ事をしたではありませんか」
 だが、それは一瞬の事だった。
「でも! そのお話とこの今のわたしの状況とどう繋がりがあると言うのですか!?」
『そこで凌央さんの出番なのです! 今まで凌央さんは漢字の四字熟語でのみ効果を発揮できませんでした。
 それに効果持続時間もあまり長くはありませんでした』
「それはそうでしたが…… 凌央には四字熟語限定と言う事が枷になるとは思いませんが?」
 この数年間。凌央は常に四字熟語を多用していたので、四字熟語限定ではなくなったとて
あまり変わりはしないだろう。
『そうだとしても持続時間が長くなると言う事はすばらしい事です!』
「まあ確かにこれからの戦闘はずいぶんと楽にはなるでしょうね……」
 巴は、そのときの事を考えていた。 埜之香の3匹の犬に『忠犬』等と書いてやれば
あんなにふらふらと飛ばない、今の数倍くらい役に立つことだろう、と。
『そのための実験なのです! 無いとは思うのですが、失敗している可能性もあります。
 もしかしたら使用後に何か不具合が起きるやもしれませんし。
 実際に使って試すのが一番効果的だと私はお伝えしているのです』
 巴は少し考えた後、一言だけこう言った。
「仕方ありません。でも! 今回だけです! もし次回があるなら他の方を当たってくださいな」
『ありがとうございます! きっとそう言ってくれると信じておりましたとも。』
「ただ! 今の説明とわたしが拘束されている理由が全く一致しません。わたしを拘束しなくとも
 その実験は出来るのではありませんか?」
『それはそうなんですが……暴れられると私たちでは止められないので致し方なく。
 それに、その方が雰囲気がいいんです! 密室にて縛られる美少女! そそられませんか!?』
「わたしは殿方ではありませんので賛同できません。もし、仮に殿方であったとしても賛同はしていなかったでしょうが」
『うむむ……ま、まあいいとしましょう。では、時間もあまりなくなってきたことですし、さくっと始めちゃいましょう。
 凌央さん? 準備はよろしいですか?』
「…………」
 今までのやりとりを無言、無表情で聞いていた凌央はこれも無言で頷いた。
 その直後、何処からかワゴン台車(病院などでよく見られるタイプのものだ)が凌央の元に流れてきた。
その上には、透明なガラスで栓をされたガラスの瓶が置かれてあった。
 その中には安物のサイダーを思わせる水色の液体が満たされている。
『では、それをぐぐっと飲んじゃってください。大丈夫、危険はありませんよ。
 私が保証致します! 味の方は自信はありませんが……幾分味覚センサーは付いていないものでして』
「本当に大丈夫なのですか? 見た目にもあまりよいとは思えないのですが」
「…………」
 凌央は特に躊躇いもせずに瓶を手に取り、蓋を外し中身を飲み干した。
「凌央!? 大丈夫なのですか? あんなエロ羊の言う事をあまり信用しない方が……」
「…………?」
『さて、凌央さん。気分はいかがですか? 博士の説明書きによれば今から半時間は強化されるとの
 事なんですが……』
 凌央は自分の両手を見比べた後、つま先から順に視線を身体の上部に上げていった。
 最終的には―変化無し―と言う結論に至り戸惑い顔(と思われるだろうが無表情)で謎の声がいると思われる方向を向いた。
『ふむ。身体、精神共に変化なし、と。気分はいかがです?』
「…………」
『悪くない、と。 さてさて、それでは実験の方を開始いたしましょう。
 ではお待たせしました。巴さん。あなたの出番です』
「それで、わたしは一体何をすればよろしいのです? そもそも、この状態で一体何をしろとおっしゃるのでしょう?」
 数分間放置されていた巴は、苛立ちが積もりに積もり、巴の中を充満させている。
 つまり、今の巴を抑えるべき理性や感情と言うものは遥か底の方に追いやられ、ただの踏み台となっている
状態である。わかりやすくいえば、堪忍袋の尾が切れている状態だ。
『そ、そんなに怒らないで下さい。それと、巴さんは特に何もしなくても結構ですよ。
 ただ、心の準備だけしておいてください』
「……心の準備? ―――凌央? どうしたのですか? 筆なんか持って………まさか!?」
『さすが巴さん。察しがいいですね。その通りです。今回はあなたの身体に凌央さんの能力を試してみよう、
 と、そう言う趣なのですよ』
「な!? ど、どうしてわたしなのですか!! それならば他にも色々と協力してくださる面々が居るではありませんか! 
 そうです、琴梨なら喜んで手伝ってくれるでしょう! いえ、むしろ自ら望んで行うと思うのですが……っ!!」
「…………」
 必死で謎の声に抵抗していた巴の前に凌央が無言で立っていた。
 いつもなら幼く、小さいその身体も、今の巴にとってはとても大きなものに見えてしまった。
 そして、その手に握られた薄い光を放っている筆を巴の腹部にかざした。
「……?」
 そこで、凌央は手が止まっていた。凌央は少し考えていた。
 そう言えば、何を書けばいいのだろう。そこまでは聞いていなかった。
『ああ、そう言えば書いてもらう文字を伝えていませんでしたね。……うーん、ではこれなんてどうでしょうか?』
 巴の死角の位置にあるモニターにとある言葉が映し出されていた。
「…………(こく」
 顔をうっすらと赤く染め、凌央は頷いた。
 ただ、この部屋は暗いためその事に気付いたものは一人も居なかった。
 そして、先ほどから巴の腹部の上に置かれていた筆を動かし始めた。
 その筆は謎の声が示した言葉を巴の腹部に描いていく。
 描き終わり、凌央が巴から少し離れた時、巴の腹部に書いた文字が淡い光を放った。
「一体わたしのお腹に何が!? というよりも、一体どんな言葉を書いたのですか!?」
 巴は何とか顔を腹部に向け、そこに光っている文字を読んだ。
「逆さからだと読みにくいですわね……えっと、発…情……期…? な!? 『発情期』!?」
『はい、そうです。『発情期』。今更説明なんて必要ないでしょうが、念の為。
 一番身近な例で上げるならばやはり犬でしょうか? 野良犬などがよく電柱なんかに
 抱きついて腰を振っていますよね? あの行為をしている犬は『発情期』なんです。
 もうしたくてしたくてたまらないんですよ! それでしかたなく、電柱などで自慰行為を
 しているのです。人間には発情期はありません。まあ、年中発情期なのが人類、とも
 言われていますが。あ、そうそう。女性の方にある「あの日」とはまた違いますので』
「そ、それくらい解っております!! それと、どうして、そんなに細かい説明など行うのですか…!?」
『いやいや、それは簡単ですよ。あなたに正しい『発情期』と言うのを覚えていて貰わなければ。
 もし、「あの日」と『発情期』を同じものと勘違いされていてはこちらが困るのですよ』
「どういう…ことなのです…かっ!?」
『実は、以前に小動物で何度か実験はしているのです。ただ、同じ種類の動物でも個体が変われば
 起こす反応が違った。つまり、その言葉を自分が把握している意味の反応が起きたんです』
 謎の声は淡々と続けた。
『つまり、博識な方にはその言葉の意味通りの反応があるのですが、無知なもの――簡単に言えば
 バカな方ですね。には思ったとおりの反応が無いんです。ですが、今の実験対象は、巴さん。
 あなたです。あなたは聡明な方だ。こちらが言った事を素直に受け取っていただける。
 もし、その知識が間違っていたとしても、効果が出る前にこちらで修正すればいいだけなのですから』
「なっ!?」
 巴は、愕然とした。
 いつもは足蹴にしているあのエロ羊に、ここまでいいように手玉に取られてしまうなんて、と。
 実際にはそれ以外にも色々と思うところはあったのだが、今の巴にはそれを考える事は出来なかった。
『さあ、そろそろ効果が現れる頃合ですよ。さて、あなたは一体どのように解釈をしてくださったのでしょうか、
 非常に楽しみです。おっと、カメラの方も準備しておかなくてはなりませんね』
「あぁ、な、なんなのです、このむずむずとした体の疼きは……。
 は、ぁ……身体が…あつ、い!」
『さて、では、実験記録の撮影を開始いたしましょうか!!』

 

『能力使用からおよそ5分経過。対象者、つまり巴さんの様子は………』
「あぁ……く、ぅぅ、だ、誰か…助けてください……こ、こんな…」
『と言ったところですね。そろそろ我慢の限界のようですね?』
「そ、そんなことはありませんん!! が……、お、かしくなりそ……」
『さて、では凌央さん。巴さんがよく見えるようにカメラを動かしていただけますか?』
「……(こくっ」
『おお。何てすばらしい位置でしょうか!? 凌央さん、あなたわかってます!』
 謎の声は、人間だったならば感動の涙で周り一面が洪水になりそうな程の勢いがあった。
 そして、その勢いは留まる所を知らず自分の世界に浸りこむまでに到っていた。
『ああ、それにしても普段があんな巴さんもこうなってしまうんですね。
 この記録は何重にも何重にもコピーし、プロテクトをかけなくては。
 後に巴さんに消されるような事が起きたとしても他に―――』
 コンピュータにも思考の渦に飲まれることがあるらしい。
 凌央は一人でそう納得していた。
「り、凌央! たす…け…!!」
 その後ろ。未だに両手両足を拘束されている巴は、ついに凌央に訴えかけた。
 実験は成功だ―――。なら、巴の拘束を外しても何も問題は無い。
 凌央はそう思っていた。だが、凌央には巴の拘束を解く事は出来そうになかった。
 巴は、何も無い机のような場所に仰向けに寝かされている。もちろん全裸で。体勢は、大の字と言えば解るだろう。
少し違うところは、両膝を90度近くに曲げ、且つ両手両足の自由を奪うように手首、足首を寝台に拘束しているところだろうか。
もちろん、脚の方から巴を見れば、秘所は全て丸見えの状態である。
 その拘束具なのだが。ベルトを寝台に括り付けているのではなく、SFアニメなどでよく見る寝台からベルトが
飛び出る仕組みになっているようだった。
 残念ながら寝台周辺にはこれを操作するようなものは見当たらなかった。
 きっと、謎の声がいる所でしか解除できないようになっているのだろう。.
「これ、外さなくても、ぅ! い、いですからぁぁ! この疼きを、何と…か……!」
 巴は息絶え絶えになりながらも目の前にいるまだ幼さが残る、と言うよりも子供と言った方がいい少女に懇願を止めなかった。
「………(こく」
 さっきよりも少々頷きの早さが遅くなっていた。
 凌央自身戸惑っているようだ。それはそうだろう。まさか自分がそんな事を頼まれるとは夢にも思っていなかったに違いない。
 凌央は、手に持っていた筆を恐る恐る巴の身体の上にもっていった。
 一番初めに目指した場所は、仰向けに寝転んでいても全く崩れずに天井を向いている巴の豊かな胸だった。
 能力を発揮していない今の状態の筆は、墨につける前のほぼ新品同然の毛の柔らかさを保っていた。
こんな状況などではなく、休日の居間などであろえや埜之香の頬を擦るだけでも微妙なこそばゆさを存分に
発揮してくれるであろうその筆先を、巴のつんと尖りきっている乳頭にゆっくりと掠めさせてみた。
「はぁっ…く、くすぐっ! がっ、そ、それくらいでは全然足りません! はぁ…」
 巴は不満の声を挙げてはいるが、先程の無刺激に比べれば全然マシだった。
 だが、その微妙な刺激がさらに巴の性感を高めていった。数分間発情状態で放置され、今さっきの愛撫とは
言えない擽りのせいで身体の方は完全に出来上がっていた。
(もっと……そんな筆の先でくすぐる程度などではなくて……刺激を…!!)
 巴の中の性感が高まっていくに連れて不満も積もっていく―――
 凌央はそれを気配で感じ取ったのだろうか、筆先でくすぐるのを止めた。
「り、凌央!? な、何をしているのですか?! も、もっとするのです…!!」
 巴にはもう恥や恥じらいなどは残っていなかった。彼女の性格を180°変える程の昂ぶりが襲っているのか、
あるいは元からこういう願望をもっていたのだろうか。それは彼女にすら解ってはいない。
 凌央は、巴の不満を聞きながら、筆の上下を持ち替えると再度巴の胸のふくらみに擦り始めた。
「あふっ! さ、さっきよりもいいですわ!」
 先程までの筆先とは違い、今度は木で出来た柄の部分を擦りつけている。当たっている面積は先程までとは
比べほどにならないほど少ないが、木の硬さにより直接的な刺激を巴は感じていた。
 だが、いくら性感帯を刺激しているからと言えど、指の先ほどしかないモノだけでは満足できなかった。
「ひゃ、ふっ………も、もっとくださいな…」
(………すごい)
 そして、今巴を責めている凌央にも少しずつだが変化が見えるようである。目の前で悶える少女を見つめる目は
少し虚ろで、頬は少し紅潮し、筆を持つ手には汗が溜まってきている。
 しかし、その変化など比べ物にならないほどの変容ぶりが見れる場所があった。
 ―――彼女の秘所である。
 今や、彼女の秘所は巴のモノの状態と比べたとしても勝るとも劣らぬほどの濡れようだった。自分の手によって、
巴が悶えている。その状況に彼女も興奮している証拠だった。もちろん、表情を見る限りでは誰もそんな事は察知できないだろうが。
 もし少女の顔色が変わっていたとしても、誰がそんな状態になっていると理解するだろうか?
 彼女の普段の性格から言えば、全くありえない事だった。これにもきちんとした理由はある。

 先程凌央が飲み干した『能力増強剤』。謎の声にも解っていない事だったが、実は副作用があったのだ。
服用者の気分を高揚させるという効果。一言で言い表すならば”媚薬”という語が一番しっくりとくるだろう。
 増強剤の服用からおよそ10分。その効果は完全に凌央の全身を隅々まで冒していた。
「あ……ふっ、く……」
 巴から聞こえてくる切ない喘ぎ。自分が彼女にその声をあげさせているという事実。そこに先程の副作用と言う
3段効果で、凌央の理性はもう僅かにも残ってはいなかった。
 その証拠とまでは言わないが。彼女の右手は巴の乳房を弄り(筆の先でだが)、逆の手では自分のあまり発達して
いない、乳房とは言い難いふくらみを触り始めていた。
「んん……んっ!」
 素肌をさらしていないので傍目には解らないが、きっと自分も巴と同じようになっているのだろうな。
 凌央は、今や遠くになってしまった自己意識の中でひっそりとそう思った。
「凌央……そ、その…ひ、非常に言いにくい事なのですが…」
 いつの間にか巴への刺激がお粗末になっていたらしく、巴の息遣いは多少マシになっていた。
「………(こくっ」
 巴が全てを言い切る前に、凌央は相槌を打った。
 そう、巴が何を欲しているのか。今はきっと、自分が一番良くわかることだろう。
 なぜならば、凌央も―――欲しているのだ。巴と同じ事を。
  
 ―――カランッ
「凌央……? どうかしたのですか? ―――なっ!?」
 凌央の筆が床に落ちる音が響いた。
 その音に反応した巴が、五体の中で唯一自由に動かせる場所である首を凌央がいた場所に向けた。
何とか凌央の姿を見ることが出来た巴は、今の自分の置かれている状況、状態を一時的にすっぱりと忘れていた。
 それほどの衝撃な映像がそこにはあったのだ。
「りょ、凌央!? い、一体何をしているのですっ!?」
 巴の問いに、凌央は全くの無反応だった。否、反応できなかったのだろう。
 凌央は、スカートを下ろし、ショーツの上から自らの秘所を刺激していたのだった。
 もちろん、巴の目の前で。
 四肢を固定されている巴には、凌央のソコがどんな状況になっているのかはきちんと把握は出来ていない。  
 それでも、普段は感情を持っているのかさえ怪しいほどの無表情の凌央の今の顔を見れば一目両全だった。
「はぁ、くふっ……ん―――」
 頬は真っ赤に染まり、目には恍惚の色が浮かんでいる。息も絶え絶えといったところか。当人達同士には全く
わかってはいなかったが、今の凌央は、つい数分前までの巴そのままの姿だった。
 そして、その凌央の姿を見て、今の自分のおかれている状況、状態を再度思い出してしまった巴に、再度
我慢しきれないほどの疼きが襲った。
「凌央……あなたばかり、ずるいですわ……」
 巴にはその言葉を言い切るので精一杯だった。
 他に人がいないここでは、凌央が自意識を取り戻すまでまた我慢しなければならない。
 だが、先程の凌央の胸への刺激、そして凌央の淫行を目の当たりにしたことが合い重なったことにより、
身体の内を迸る熱い疼きは先程の比では無いくらい激しいものになっていた。
「くぅ………誰か……」
 内股を擦り合わせる事すら出来ない巴は、両目を思い切り閉じ、いつ止むとも解らぬ疼きに耐えていた。
両目を閉じ、必死に身体の疼きを抑えることに必死である彼女は、自らの秘所に近づく姿に気付けなかった。
 この状況下で気付くことが出来るのは、気配を察知する事に特出している達人くらいではないだろうか。
 普段の巴ならば分からなかったが。
「―――ひぁっ!? な、ど、どなたです?!」
 それまでには無かった直接的な刺激を巴は感じた。その場所は言うまでも無い、巴が一番弄って欲しい場所である。
「んっ、くっ!」
 先程までの凌央による胸へのおどおどとした愛撫ではない、弄るためだけの接触。ここはどう言う風になっているのか。
どこをどう刺激すればどんな反応をするのか。そう言った反応を一つ一つ試すような触り方だった。
「ぃぁっ!? や、それ、は―――」
 そして、巴の膣内に細長い何かが侵入していく。
 まだ何も異物を身体に入れたことの無い巴には、それがどんなに小さいものでもものすごい異物感を感じていた。
 だが、それを上回るほどの快楽を感じてもいた。今入っているモノが非常に細く柔らかかったからかもしれない。
「ふくっ、ひっ…はぁっ! らめぇ―――」
 巴の秘裂に侵入し、内側から巴を刺激していたモノは、これなら大丈夫、と思ったのだろう。
 巴を侵すモノの数を1本から2本へと増やした。そう、巴の膣口や膣内を刺激しているモノは、刺激者の指だった。
「えっ! ふ、増えっ?! んん!!」
 中に入っている指が2本に増えたところで、その動きには全く遠慮が無かった。それどころか、
先程よりも勢いが増しているようである。1本の時は軽い出し入れのみだった。時折、膣肉を掠めることも忘れてはいなかったが。
 だが、それが2本になったことで巴との接触箇所が増え、感度も上がっていく。もちろんそれだけでは刺激者は満足しなかった。
 3本目の指が、巴の割れ目の端にある、小さな突起物を捕らえようとしていた。
「――っ! っっ!」
 巴の中を行き来している2本の指―――人差し指と中指は、子供のわき腹をくすぐるように柔らかく内壁をこする。
 そして、新たに第3の指―――親指が、充血し肥大している敏感な部分を刺激する。
「!! ――ぅぅっっ……」
 その刺激により、巴は声も無く達した。
 激しい膣の収縮により、2本の指を思いっきり締め付け、全身に軽い痙攣が襲った。
 巴が張付けられている寝台の下には、巴から滴り落ちる液体によりちいさな水溜りが出来ていた。
「はぁっ、はぁっ、んっ……」
 気持ちのいい倦怠感に身を任せている時に、巴の中から指が抜かれた。
 未だ朦朧とする頭の中、巴は一つ、信じられない事に思い当たった。
 まだ、巴は、自分を陵辱した人物が誰か把握していないのだ。
 声をかける訳でもなく。顔を覗き込まれるわけでもない。ただ、その場所と行為に興味を抱いただけと思える人物。
 感覚から言って、男性ではないだろう。というよりもあって欲しくない。
 そんな一縷の望みをかけて、少女は首を自分の足元に向けた。
 そこに立っていたのは。さっきまで自分の胸を弄っていた少女だった。
「凌央!?」
 先程までとは打って変わっての荒々しさに、同じ少女の仕業とは全く想像だにしなかった。
 今まで巴を責めていた少女は、巴の顔を見て、はにかんだ。
 少女の笑顔に、巴は困惑した。いつも無表情な凌央が笑顔をつくったことにではない。その笑顔は、少女の年齢からは
考えられないほどの妖絶さを感じ取ってしまったのだ。そして、同時に辛そうな表情だ、とも巴は感じた。
つい先程までの自分と姿が被る。だが、巴とは違い、凌央の身体は自由だ。だが、まだ幼い少女には自分で直に触る、
という事が怖かったのだろう。
「凌央、こっちに来るのです。あなたも辛いのでしょう?」
 凌央は、四つん這いになりながらも巴の隣に移動した。
 さっきは見辛い位置にいたのでよく分からなかったが、凌央の顔は高揚し、呼吸も乱れていた。
 いつの間にかショーツも下ろし、下半身は完全に裸になっていた。さらに巴の目を引いたのは、少女の脚は何故か
濡れていた。自分の愛液か、とも疑ったがそう言うわけでもなさそうだった。少女の花弁から垂れ出しているのは
誰の目から見ても明白だったからだ。
「凌央。わたしの手の上に腰を下ろせますか?」
 こくん。と、静かに、でも力強く少女は頷いた。
 巴が横たわっている寝台は、そんなに背の高いものではなかった。せいぜいワークデスクくらいだろう。
 だが、副作用やら先程の胸への刺激等のせいで、凌央は腰が抜け掛かっていた。
 満足に立つ事も出来そうにない。凌央は、何とか寝台の端に手をつけ、よじ登ろうとする。
「っっ!!」
 脚を上げることによって、秘所が擦られる。その刺激が凌央の腰をさらに落とそうとしている。
 ―――まるで、少女がこの台に登る事を否定するように。
「はっ……んんっ!」
 勢いに任せ、寝台の上に登りきる。そのまま、巴の腕の上に倒れこんだ。
「凌央。苦しいのですよね? 先程までのわたしなら痛いほどにあなたのことを分かってあげられることでしょう」
「はぁ、はぁ、はぁ………」
 凌央はもう息絶え絶えと言う状態だった。
 巴は母のように優しい声で凌央にささやいた。
「凌央……準備はよろしいですか?」
 
 
 翌朝。巴は目を覚まし、辺りを見回した。
「わたしの、部屋ですね」
 もちろん、寝巻きをきちんと着込んでいる。下半身も濡れてはいないようだった。
 やはり先程のことは夢だったのだろう。そういう風に考える事にした巴。
「あぁ、それにしてもあんな夢を見てしまうなんて―――」
 いくら夢の中の出来事だとしても、アレはないだろう。巴は先程までの夢を思い浮かべる。
 あの後、凌央が自分にした事とほぼ同じ事をしてあげた。その最中にまた感情が昂ぶってしまい、結局二人で
ずっと慰めあっていた。何回達したのかは数えたくも無い。よくよく考えなくても赤面モノだ。
「このことはすっぱり忘れましょう。気分転換にガニでも引っ叩くのも悪くないですわね」
 そう呟いた巴は、朝食が準備されているであろう食卓へと向かっていった。
 巴は寝巻きから着替えなかったので気付くことはなかった。
 昨夜とは下着の色が変わっていること。そして、寝巻きのボタンが一つ掛け間違っていることを。

 ―――これは余談だが。
 朝食中、何故か巴が凌央の方を見て真っ赤になったり、凌央が微妙にいつもと違う瞳で巴を見つめていたりしていた。
 秀明がそれに気付き、巴に問い質してみたが
「そんな事はありません。寝起きだったのでぼーっとしてしまっていただけでしょう」
 といい切り、凌央に到っては我関せずの精神でこの場を去っていってしまった。
 ちなみにガニメーデスは、秀明がこの家に来てから、いや、それ以前の頃からとしても一番テンションが高かった。
 あろえがそう言うので間違いないだろう。その理由は誰にもわかってはいないが。


                                  <TOP>