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   学校を出よう! 〜What does she consider?〜


  あの吸血鬼繁殖(?)事件発生から何週間が経った今日。
 暦は、一般的に言うクリスマスを迎えていた。私は、あの後も特に何も変わる事もない生活を送っていた。
 ……私の中に居た別人がいなくなったけれど、私自身に特に変化はなかった。
 まあ、いきなりトイレにいる。何てことはなくなったのだけれど。
(今日も一日何事もなく過ぎてよかったです。)
 口に出す事は出来ないので、心の中にだけにしまっておく。
 私のESP能力は特別だ。私が発する『言葉』が現実のことになってしまう、
 といえば一番解りやすいだろうか。
 こんなに簡単に力が出てしまうので過去には結構誤発動した。
 寝言で言った(らしい)言葉のおかげで子供の日に本物の鯉が棒にくっついて
 風になびいていたこともあるし、他にもいろいろあった。
 でも、今現在は真琴さんのおかげで暴発することは、もうない。
 真琴さんには感謝している。言葉を発せない事は辛い時も無い事は無いけれど、
 微弱ながらも私も感応能力があるのでコミュニケーションは一応取れているし。
 何しろ箝口具をつけなくてもいいということが一番大きかった。
 言葉は発しないものの、息もし辛かった。それにくらべ、このマスクは
 通気性もよく、息もできるのでまさに天と地ほどの違いだった。

(ふう。)
 今日予定されていたパーティを全て終え、ベッドに潜り込む。
 眠る時にもマスクをつけなくてはいけないが、それももう慣れてしまった。
 今では逆にマスクを外していると不安になってしまう。
 もうこの事を考えるのは止めよう。そうだ、明日の授業って何だっただろう。
 ……しまった。明日の科目の事を考えると、少し気分が暗くなってきた。
 どうしてこんな時にあの授業がある日が次の日なのだろうか。
 別に無理して受けなくてもいい授業なのだけれど…サボる、ということは出来ない。
 ダメだ。このまま考え込んでしまうと眠れなくなってしまう。
 こういうときは、過去にあった楽しい思い出に浸るのが一番の睡眠に近づく方法だと私は思っている。
 その例に違わず、私は少し記憶の世界へと旅立つ事にした。


  まず、一番始めに思い浮かんだ事。それは、あの時の吸血鬼事件のことだった。
 このことはほぼ毎日と言っていいほど思い返される。
 あの日から季節が一つ二つ過ぎてはいるが自分の中ではまだ昨日のことのように思い出せる。
 いきなり真琴さんに会長室に呼ばれたときから、最後の瞬間まではっきりと。
 たくさんのことがあの数日間にあった。それ以来も、私に友達も増えたりするなど結構たくさんなことがあった。
 その中でも、特に想い浮かぶのは一人の人物のことだった。
 確かに、真琴さんのことも思い返す。あの女性は私の恩人だ。
 彼女が居なければ今の私はきっと無いだろう。
 だが、それ以上に、一人の男子学生の顔が頭の中に浮かんでくる。
 彼と一緒にD棟に潜入インタビューに行った事。
 真琴さんが吸血鬼になってしまった時の彼の表情。
 思い返せば思い返すほど、彼の顔しか浮かばなくなってしまう。
 こんな事は初めてだった。
 楽しい思い出を繰り返す事は多々あっても、特定の人物一人のことを思い返す、
 ということはあまりした覚えが無い。
 まあ、この能力があるせいであまり友人は多くないのがその原因の一つであると思うのだけれど。
 ……せっかく楽しい事を思い浮かべようとしているのにこんな事を考えるのは止めよう。
 自分のこういうところがあまり好きではない。能力の所為なのか、元来の性格の所為なのかはよく思い出せないけれど、
 かなりのネガティブ思考なのだ。まあ、このマスクを付け始めた位からはかなりポジティブに考えるようにはしているけれど。
 今でも一人だと、ついネガティブになってしまいがちだ。
 ………はぁ。どうしてこうすぐに脱線してしまうのだろうか。
 今は過去に浸っていたいのだ。自分の暗い性格の事を想いふけって居たくなんかない。
 それよりも明日は朝から朝食当番に当たっているのだ。
 クリスマス後日くらい休みたいものだが誰かがしなくてはいけない事なので文句もいってられない。
 早く寝なくては明日の朝に響いてしまう。
(早く寝なくちゃ……)
 そう思えば思うほど眠くなくなるのはどうしてなのだろう。
 自分の考えに焦らされているのだろうか?
 ……こういうとき、彼はどうやって眠っているのだろう。
 彼は現在宮野さんと同室していると聞いた。
 あの人は一日中忙しい人なのに、よく一緒に暮らせるものだ。自分には全く真似できそうに無い。
 今でさえ、私は一人部屋なのだ。たとえ大人しくて静かな人でも同室する、となると緊張してしまうかもしれない。
(でも、一人も寂しいし……)
 今度、真琴さんにでも相談してみよう。
 きっと、彼女ならいい同居人を紹介してくれるに違いない。
 

  さて、一つ疑問(?)も解消した事だし、眠る事にしよう。
 掛け布団を頭まで被り込み、闇の世界へと潜り込む。だが、そこで待っていたものは彼の笑顔だった。
 とても優しく微笑む彼の笑顔。全て見透かしたかの様な瞳。
 そして、頼りになる声……
『まだ、起きてるか?』
(え!?) 
 よく耳を澄ます。だが、何も聞こえる事はなかった。
(空耳……ですよね?)
 よくよく考えれば、私が眠っているこの部屋は男子禁制の女子寮だ。
 瞬間移動能力を持ってしても侵入不可であるという絶対神聖な場所…のはず。
 そんなところに何の能力も持っていない彼が誰にも見つからずに入って来れるはずが無い。
(でも、確かに聞こえたと思うんですけど…)
 いくら耳を澄ませても物音一つ聞こえない。
(やっぱり、気のせいでしょうか)
 でも、そのおかげとでもいうべきかどうか。
 彼の声らしきモノが聞こえたことによって、心の奥から安心する事が出来た。
 これならば、朝まで熟睡する事が出来そうだ。
 目を瞑り、明日の事を考え始める。だが………
 さっき以上に彼の顔が頭から離れなかった。否、逆に頭の中に彼の顔が送り込まれてくるかのように、
 様々な彼が浮かんでくる。
  …これは、何? 一体何なの? いつもとは比べ物にならないほどの情報に逆に不安になる。
 そして、ついに私は、おかしなものを目にしてしまった。
 私のベッドの横に立つ、彼の姿を。
(え!? 扉、開いてないのに? って言うかここ、女子寮…)
 ものすごく気が動転し、一気に眠気も覚めてしまった。
 よく見てみれば、この彼の後ろにある本棚の姿がうっすらと見えている。
 足元に影もたって居ないようだ。
 だが、このときの私には本物としか思えなかった。空耳とはいえ、彼の声を聞いているのだ。
 疑いようが無かった。だが、意思を伝えようと伸ばした手は、虚空を掴むだけだった。
 それで確信した。ああ、これは私が見ている夢なのだ、と。
 それでも、この彼は私に問い掛けてくる。
『迷惑だったか』
 それは私に言っているようでいて、まったく誰にも問い掛けられていない言葉だった。
『悪かった。もう、行くよ』
 本当は、何も言っていない。だって、そこには誰もいないのだから。
 でも、私にはそう言っているようにしか聞こえなかった。半透明の彼の表情がそう物語っているようだったから。
(そんなこと、全然無いです)
 触れれないならば、と、思念を飛ばそうとしてみる。
 けれど、私には出来そうに無かった。なので、心の中で伝える。
(あなたは、私の数少ないお友達です。そのお方を邪険になんか扱えません)
 伝わる事の無い私の想い。それでも、幻影の彼には届いていたようで、
『…………』
 言葉はよく分からなかったけれど、その表情はとても柔らかく見えた。
 表情を変えた彼はすぅーっと私の方に近づき、私に重なるように倒れこんできた。
(え!?)
 そして、そのまま姿を消した。
(一体、何だったのでしょうか)
 今ここで起きたことが現実であれ、夢であれ、私が体験した事には変わりないのだけれど。
 一度気になると仕方がなくなってしまうので、取り合えず気にしないようにすることにした。


  彼が居なくなって少し経った頃、私に緩やかな眠気が降り始めていた。
 だが、眠気と同時に胸の奥の苦しみも大きくなっていた。
 眠っているのか、それともただ悶えているだけなのか。
 自分でもどっちなのか全然解らない。そんな状態。
 少しでも胸の苦しみを抑えようと、自分の手を胸元へ伸ばす。
 胸を軽く押さえ、謎の苦しみに悶えることおよそ数分。
(はぁ…何なのでしょう? この辛さは…)
 段々と息遣いが荒くなる。少しずつ、身体が火照ってきているような気もする。
 そして、胸を押さえる手が、服の上から私のあまり大きくない胸の、先端にある突起物に触れてしまった。
ビクッ!
(あっ!………な、何!? 今の感覚…)
 まるで脊髄に電気を通されたかのような衝撃。
 初めて感じるその感覚に、私は戸惑いを隠せなかった。
「…!!…!…!!?」
(だ、ダメ!? 手が、止まらない…)
 全く自分の手が言う事を聞いてくれない。まるで、誰かに操られているよう、
 いや、それとは少し違う。一番しっくりと来るのは『誰かに乗り移られているよう』
 といった感じだろうか。なまじ感覚がある分、余計におかしく感じる。
 次々と、上着のボタンを外し、身に付けている衣服が少なくなっていく。
「!! !…!!」
 直に胸に触れる指。触るとすぐに崩れる砂の城を崩さないように崩さないようにと
 扱うような指使い。自分のモノのはずなのに、全く知らない動きを続ける両手。
 胸から絶えず流される甘美な刺激。
(あふ……どう、して…止まらない…の)
 ついに左手が胸の頂点に辿り着いてしまった。
 淡いピンク色のその頂点を軽くつまみ、コロコロと指の間で転がす。転がす。転がす。
(きゃぁっ! だ、ダメです! と、止まって……お願いですから…)
 その願いは、自分の両手にすら届く事も無かった。
 逆に、開いていた右手が段々と下に下がっていく。
「…!!!」
(いや!! 止めて!)
 無情にも右手はショーツの中に入り込んでいく。
 そこは、もうすでに少々湿っていた。
(うぅ……)
 最初は周りを軽く撫で回す程度の刺激。けれど、段々とその刺激は強くなり、
 次第に中心に近づいていく。
 そして、クレバスの先にある、小さな突起を見つけると、そこを重心的に攻め始めた。
「!!……!、!!」
(あ、やぁ、やめ……んん!) 
 段々と頭の中でも制止させる言葉が少なくなっていく。
 それと同じく、この手も自由になっていった。
(も、もっと……あ! そ、そこですぅ…)
 今では、さっきと反対に思ったところにしか手は進まなかった。 
 それでも、自分の両手とは全く思えない、不思議な感覚は続いている。
 そう、今ではこの手は自分の手ではない。
 彼の両手としか感じる事が出来ない。今、私は彼に全身を愛撫されているのだ―――
(や、あ、うぅ…! な、何か…く、る?!)
 そして、その時はすぐにやってきた。 
「…!!!!!!」
(っ!! んんんんううぅ〜………)
 全身を激しく痙攣させ、弓の様にしならせる。
 そう、私は初めての絶頂を経験したのだ。


(な、なんだったのでしょうか………)
 全身の筋肉を弛緩させ、身動き一つ取れない。
 けれど、このまま横になっているわけにも行かない。
 正直、このマスクが口に張り付いて息がしにくいのだ。
 早くこのマスクを外さないと自室で窒息、何て言う笑えない事になってしまう。
「ぷはっ」
 すぅぅ〜〜っ、はあぁぁ〜っ。
 大きく一つ深呼吸。
 どうして、あんな事をしてしまったのか。未だに良くわからない。
 けれど、気持ちよかったのは確かだった。
 そして、途中から、彼の顔が頭から離れなかった事も確かだ。
 別のマスクに変えながら、今あった事を少し思い返す。
 ………止めよう。恥ずかしいだけだ。
 それよりも、今なら良く眠れそうだ。少し運動した後だから、身体も程よく睡眠欲を
 訴え始めている。きっと、ベッドに潜り込み、掛け布団を被りこんだらすぐにでも
 夢の世界へと旅立つ事が出来るだろう。
(それなら、早く眠る事にしましょう) 
 そして、私はベッドに潜り込む。
 楽しい夢を見るために、深層意識に潜り込む、その少し前。
 私は、一つだけ。たった一つだけ、サンタクロースに願い事をした。
―――いつの日か。ほんの一日、いや、一瞬だけでもいい。
   彼の名を、私のこの口から本当の私の声で呼びたい、と―――


「さて、いい夢見なさいよ? あんたには色々迷惑かけちゃったからねぇ。
 たまにはいい目を見てもらわなきゃ、あたしもゆっくりと年の瀬を楽しめないから、さ」
 その日。全身を真っ赤な衣装(俗に言うサンタクロースの格好、ただし、露出は高め)に包まれた 
 会長代理の姿を見かけた生徒が多数いたらしい。
 だが、祈の部屋の前に居たかどうかまでは誰も知るものは居なかった―――

 
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