(偽)長門有希の恋心 〜中編〜
どれくらい抱きしめられていたのだろう。
ふいに、彼が私を解放した。
「悪い。急に抱きしめたりして」
「気にしなくてもいい。……私も、嫌じゃなかったから」
比較的無表情な(朝倉涼子によく言われる)私に出来る、精一杯の微笑み。
彼の顔が少しずつ、朱に染まっているような…
「キス、してもいいか…」
こくん。
「んん…」
唇を重ねるだけの軽いキス。それでも、身体が少しずつ火照っていくのを感じる。
「ぷは」
少し、息苦しかった。
「はは、悪い」
「どうして笑うの?」
「いや、すげえ可愛いなぁって」
「…///」
少し俯いて、照れる。
今、彼とまともに目を合わせられない。こんな顔、見せたくないから。
そう言って、頭をなでる、彼。
くしゃくしゃと、少し髪型が崩れてしまった。
まぁ、いつも特にセットなどしてはいないのだけれど。
「長門。眼鏡、外してもらってもいいか?」
少し悩む。眼鏡くらい外しても何の問題もない。
けれど……。私は極度の近眼なため、眼鏡を外すと彼の顔が全くと言っていいほど見えなくなってしまう。
……それでも彼が望むなら。眼鏡を外そう。別に一生顔が見えなくなるわけでもないのだし。
それでも少し躊躇したあと、眼鏡を外し、コタツの上へ。
「うん、やっぱり眼鏡が無い方がいいな」
「……そうなの?」
「ああ。俺には眼鏡っ娘属性はないからな……っと、これは聞き逃しておいてくれ」
「……眼鏡っ娘属性?」
なら、今度コンタクトに変えてみよう。それなら、眼鏡をかけずに彼の顔も見れるし。
不意に、彼は私に再度キスをした。
この距離なら、彼の顔もはっきりと見える。
「顔、すごいまっか」
「う、うるさい! そういう長門も真っ赤だぞ」
「「…………」」
急に二人共無言に。
そしてどちらからとも無く
「…くす」
「…はは」
笑い出してしまった。
十分に笑い終わったあと、彼は、私の後ろに回りこんで抱きしめに来た。
私は、それを拒まずに受け入れた。
抱かれる側としても、気持ちよかったから。
「長門って、抱き心地いいんだな」
「…………」
つい最近も、その言葉を聞いた気がする。
少し考えている間に、彼は、あくまで自然に、私が触られるまで気付かなかったほど自然に、
私の胸を揉み始めた。
「んん!」
いきなりの感触に私は驚いて声が出てしまった。
「うん、ここの感触も最高だ。柔らかくてとてもきもちいいよ」
「………///」
触られているこっちの側としては、何とも言いがたい、言葉だった。
数分間、彼は私の胸を揉み続けていた。
「長門って、あったかいな」
「……人並みだと思う」
「髪、いい匂いするし」
「……毎日、きちんと洗ってるから」
彼は、思った事全部きちんと声に出しているようだった。
「こういう事されるの、実は嫌いじゃないだろ」
「…………」
言い辛い事には無言。
「…なぁ、長門。無言ってのはな、肯定と一緒なんだぞ」
図星だった。
「…………」
なぜ彼はそういう事までわかってしまうのだろうか。
そう考えていた時だった。
彼の右手が私の制服の中に入ってきて、直に私の胸を揉み始めていた。
「きゃ!?」
「悪い、びっくりしたか?」
彼は謝りつつも手の動きは止めなかった。
「む、制服の上からじゃ解らなかったが…」
「なに?」
「長門って、着やせするタイプだったんだな」
……喜んでいいのだろうか。
「ん? どうした、そんな顔して」
私の顔色が曇ったのがわかったのだろう。彼はそう尋ねてきた。
「一応褒めたつもりだったんだが」
「……そう」
何だかそうは聞こえなかったけど。
「そう取れなかったのなら悪かった。言い換えよう。長門って、結構胸、あったんだな」
「……そっちの方が言い方が悪い気がする」
「むぅ…ま、まあ、俺としてはいい事だと思うぞ」
それでも、まだ彼の手は止まらなかった。
「んん…はぁ」
…少し、声が出てしまった。
「気持ちいいのか?」
「…………」
また無言。それを彼は、
「そっか、気持ちいいか」
と、肯定していると思ったようだ。
……それを否定出来ない事が少し、悔しかった。
段々と、彼にスイッチが入っていったのだろう。
彼は、私の制服を脱がそうとした。でも、私はそれをやんわりと制した。
「長門?」
彼は、そんな私の行為に不安になったのだろう。
恐る恐ると言った感じに聞いてきた。
「嫌ならやめるぞ」
と、少し残念そうにいう彼。
ふるふる。
私はゆっくりと首を横に振る。
「……脱がされるのは、恥ずかしい」
と、小さな声で彼にそう答えた。
「…自分で、脱いできてもいい?」
寝室を指差しながら私は彼に問った。
「あ、ああ。もちろん、いいぞ」
と、彼はずざざざざ、という効果音が聞こえそうなくらいの勢いで後退していった。
私は立ち上がり、寝室の戸の前に立つと
「…覗かない?」
「もちろんだ。この命にかえても」
「…くす」
安心して部屋に入る。
取り合えず、一休憩。学校からずっと、彼と一緒に居るので気を張っていたのだろう。
ベッドに座ると、自然と溜息がでた。
少しずつ、服を脱ごう。
上下共、制服を脱ぎ、ハンガーに掛ける。
下着姿になり、下着はどうすればいいか少し悩む。
下着を脱いでいけば、彼にとっては手っ取り早くていいだろう。
でも、そのためには全裸になって彼の前まで行かなくてはならない。
残念ながら、この部屋には裸の私を包み隠してくれるようなものは、何一つ置いてなかったから。
なら、答えは一つ。
下着姿のままでいよう。
さて、脱衣も終わった。後は彼のところへ行くだけ。
でも、まだ心の準備は終わっていなかった。
ベットの縁へ腰掛け、少し落ち着く事に。
すー、はー。すー、はー。
胸に手を当て、大きく深呼吸。それを数回繰り返す。
何故か深呼吸をすればするほど、私の鼓動は高まっていった。
取り合えず、状況確認をしなおそう。
今、私は彼と二人っきりで自分の家に居る。
そう言えば、昨日まで、話した事もなかったのに…
今では、彼に抱かれようとしている。
何か、都合が良過ぎるような気もするけど…その事を考えると、胸がさらに熱くなった。
このままだと、彼のところに行けそうにもない。
仕方ないので、彼をこの部屋に呼ぼう。
部屋の戸から顔だけを出し、彼の方へ向き、
「…入って」
と、彼を呼んだ。
「…いいのか?」
「うん」
眼鏡を掛けていなくても、彼の顔が赤く染まっているのが確認できた。
「じゃあ、入るぞ」
律儀にドアの前でそう確認を取る彼。
「…どうぞ」
「それじゃあ失礼して…」
彼は、部屋に入ってすぐ、固まった。
「「…………」」
その視線は、私の身体に向いているようだった。
まさか、本当に制服を脱いで、下着姿で座っているとは思っていなかったのだろうか。
「やっぱり、結構胸あるんだな」
「…………それはもういい」
「だろうな。悪かった」
彼は私の隣に腰を下ろした。
そして、どちらからと無くキスをした。
「んん…んむぅ」
それは、さっきまでのとは違い、舌もからめる、深い、愛情のこもったキスだった。
彼の舌は、私が想像していたものよりも暖かく、柔らかかった。
まるで、違う生物のように私の口内を動き回っていた。
「んむ…あふ……はふぅ」
彼の唇が離れても、私はその感触を忘れる事が出来ずにぼーっとしていた。
「……くすぐったい」
いつの間にか、彼の口は私の首筋まで下がっていて、首筋に、無数のキスの嵐を浴びせていた。
「んん…」
彼の左手が私の右胸に触れる。
それも、直に。
「きゃ!?」
いきなりの強い刺激に驚いてしまった。
「悪い、びっくりしたか?」
こんな時でも気遣ってくれた。
「ううん、だいじょうぶ」
その言葉を聞いて安心したのか、彼はまた行為を再会した。
いつの間にかブラを外されていた私は、彼の頭を子供をあやす母親のような気持ちでなでた。
「なんか、変な感じだな」
「…そう?」
私はそうはおもわないけど。
「そうされるとさ。とても落ち着くんだ」
「それは私も同じ。こうすると、とても落ち着く」
少しの間、そうしていると、彼はまるで本当の子供のように私の胸を吸い始めた。
最初、舌で軽く舐めたあとに口に含んで甘噛み、最後は音を立てて吸う。
この3つの動作を繰り返していた。
ぺちゃぺちゃ、あむあむ、ちゅぅぅ。
ぺちゃぺちゃ、あむあむ、ちゅぅぅ………
「あ、はぁ、ひゃ、んん、や…」
一つ一つの行為ごとに律儀に声が出た。
今、彼は私の左胸を吸ったりしながら、右胸を左手で弄っている。
つまり、両胸を刺激されているわけで、私にはもう彼の頭をなでる余裕はなかった。
「…長門って、胸、弱いんだな」
「言わないで…」
また、どこかで聞いたような台詞。
でも、それも考える暇も無く。
「や、ああ、はぁ、ん…」
彼の私の胸に対する愛撫は止まらない。
完全に私のスイッチが入ってしまった。もう、ここでやめることなんて出来ない。
「…胸だけじゃ、いやぁ」
と、あまり呂律の回らない声でそう彼に訴えた。
その言葉を待っていたかのように、彼はすぐに胸への刺激を止め、私の下腹部へ向かっていった。
「すげぇべとべとだ」
「/////」
私のあ、あそこ…はショーツの上からでもわかるくらいに濡れていた。
「そんなに気持ちよかったんだな」
「はずかしい…」
身体は彼の下にあって身動き取れないので、首だけ彼からそむける。
もちろん、顔は真っ赤に染まっている事だろう。
まぁ、そんな行動をしても何の解決にもなっていないけど。
「………」
不意に彼が無言になった。
「?」
不思議に思って彼の方を見てみる。
「隙あり」
「あ……」
その瞬間。彼は、もう何度目かわからないキスを私にした。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だ」
彼は、いつもと同じ位(それ以上かもしれない)優しい声で言ってくれた。
今、私達は二人共衣服を全て脱ぎ去っている。つまり全裸と言うこと。
その状態で抱き合っている。その状態では、誰でも緊張はすると思う。
「………うん」
でも、彼に優しく言われてしまったら、もう緊張なんてする余裕は無かった。
さっきまでの胸への愛撫。それだけで、もう私の準備は十分だった。
「じゃあ、入れるぞ」
「…………」
こく。
「くうぅ…」
彼のモノが、少しずつ膣内(なか)に入ってくる。
身体の力を出来るだけ…出来るだけ抜く。
そう意識していても、自然と全身に力が入ってしまう。
力が入れば入るほど、痛みが大きくなる。
「はぁ…はぁ…」
まだ…入って来るの?
そう思ったときだった。
ぶちぶちぶちっ
「っ!!」
彼が、私の膜を破った。
「長門、今、完全に入ったぞ」
「はぁ、はぁ、はぁ…………」
あまりの痛みに、答える余裕も、首を振る事さえも出来なかった。
「長門…」
彼は、私を優しく、包み込むように抱きしめてくれた。
「はぁ、はふ、ふぅ…」
彼の暖かさを感じる。そう思っただけで、自然と息が整っていった。
「長門、大丈夫だったか」
「………うん、ぜんぜんへーき」
口で言うのは簡単だった。
「無理だったら、すぐに言うんだぞ」
「わかってる」
彼の細かい気配りが、すごい嬉しかった。
「っ! んく…は、うぅ」
まだ、痛かった。流石にそんなすぐに痛くなくならないらしい。
「く……」
それは、彼も同じだったようで。
私はまだ、力を抜く事が出来ていない。きっと、痛いくらいに締め付けているのだろう。
そう思った瞬間、考えるよりも先に
「私のなか、きもちいい?」
と、聞いてしまっていた。
「ああ…最高だ」
と、彼は微笑みながら言ってくれた。
その表情を見れば、きっと誰でもわかるだろう。
その言葉は、本当なのだと―――
「…嬉しい」
心の底から、この言葉が出てきた。
彼は、何故かバツが悪そうに頬をかいている。
……どうしたのだろう。私が何か変な事でも言ったのだろうか。
「どうしたの?」
「いや…ちょっとした罪悪感が」
「なぜ?」
「………のかなって」
「…聞こえない」
「ま、まあいいじゃないか、そんなこと」
「気になる」
一度言っているなら、何度言っても同じ事だと思う。
「気にするな。俺はもう何も言う事はない」
開き直ってしまった。絶対に聞き出す。そう決意する前に
「ひゃう! んんん…」
彼は、腰を動かし始めた。
何故か、もう痛みはあまり感じなくなっており、8割快感、残りはじんわりとした痛みだった。
しかし、そのゆるい痛みが余計に感じさせているような気がする。
「長門? 感じてるのか?」
「あ、んん、ひゃ、くぅ……」
返事は、出来ない。そんな余裕なんて私にはなかったから。
「や、ああ、は、ん……」
彼の腰の動きもゆっくりと優しかったものから、徐々に速く激しいものに変わってきていた。
「!! あ、あ、あ、んん、や、ちょ、はや…」
もう意味のある言葉を出す事も難しかった。
「長門、むちゃくちゃかわいいぞ…」
「や、じ、じっく、りぃ、み、みなぁ…!」
彼の腰の動きがまた速くなる。
「長門、長門!」
「な、名、前で…よ、んでぇ」
「有希ぃ!」
「んんんんん〜〜〜〜」
びくびくびくっ
身体が痙攣を起こした。第三者的に言えば、私は達したのだろう。
それと同時に、おなかの中が暖かい液体に満たされていく……
「「はぁ、はぁ……」」
二人して、息を整える。
息が整った後、彼は私のなかから、彼の肉棒を引っ張りぬいた。
今、初めてじっくりと見たけど、あんなものが私のなかに入っていたの?
次に自分の下腹部を見る。
ピンク色の半液体の物質が私の太腿を流れていた。
それを見て、初めて、
―――ああ、今、彼と一線を越えてしまったのか。
ということを実感した。
数分後、私は自分の下腹部の処理(と言ってもティッシュで拭くだけなのだけど)を
終え、ぼーっと座って彼の方を見ていた。
彼は、一仕事を終え一服しているサラリーマンのようにくてっっとなっていた。
「くすっ」
その姿を見ると、なぜか笑いがこみ上げてきた。
「何だ? 何がおかしかったんだ?」
身体を起こして、彼が私に問い掛けてきた。
「ないしょ」
私はそう言って、ベッドから立ち上がった。
「そっか、ならしょうがないな」
「……意外と潔い」
「意外は余計だ」
私と彼の距離が近づいていく。そしてまたキスを―――
交わそうとした時だった。
―――ピンポーン。
「「!!?」」
いきなり、インターホンが鳴り響いた。
私は、近くに落ちていた服を羽織ってインターホンの受話器の方へ。
「ゆ、有希!!」
彼が何か言っている。
でも、取り合えず客を待たせるのはまずいと思ったので先に応対をすることに。
「はい」
「あ。わたし。朝倉です」
それは、同じマンションに住んでいる同級生だった。
「今日もお夕食持ってきたわよ」
「いまはちょっと…」
今、この部屋に入られるのはまずい。たとえそれが親しい仲の友人だったとしても。
「何? 誰か部屋に来ているの?」
「…………」
何て返せばいいのだろう。少し悩んでいると
「そう。でも大丈夫。あなたの知り合いならわたしとも知り合いの可能性だってあるんだし」
「でも………」
「それってわたしの知り合い?」
「うん」
これは本当。
「やっぱり誰かいるんだ」
あ。しまった。私はまだ誰か来ているなんて一言も言っていないんだった。
「ならいいじゃない。いっしょに夕食食べれば」
「…………」
少し考える。
確かに彼女が来れば、まだ彼と一緒に居られる時間が増える可能性が高かった。
「待ってて」
取り合えず、入るだけ入ってもらおう。そういう結論に到った。
『長門! ……長門さ〜ん。おーーい』
彼が呼んでいるみたいだけど……もう玄関にいるので、先に彼女に入ってもらおう。
かちゃ。
鍵を外し、扉を開く。
「よいしょ……っと。ふぅ〜。さすがにお鍋丸ごとは重かったわ」
そう言いながら、部屋の中に入ってくる、朝倉涼子。
「こんばんわ〜………あなた!? 何でそんな格好をしてるの!?」
彼女が私を見てすぐ、そう叫んだ。
私は、彼女が言い終わった後すぐに自分の服装を確認。
「あ………しまった」
私は、気が動転していたのだろう。
今の私の格好は、北校の男子の制服(上のブレザーのみ)という格好だった。
もちろん、下着は何もつけていない。
この服は彼のものなので、袖はぶかぶか、手も指の先しか出ない、服の裾も長く、
ブレザーしかないのに膝上まであった。
『だからずっと呼んでたのに……』
彼の悲しそうな声が部屋の奥から聞こえていた。
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